つながる*noyama

南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ


南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_19293141.jpg





北荒川岳からは眺める塩見岳は
恐ろしげな崩壊地を子分に従えている
さながらラスボスである。













南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_21464780.jpg






南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_21483676.jpg




広いザレ場を進むと崩壊地なのだが危険のため迂回する。
岳樺とマルバダケブキで構成されている広いキャンプ場跡地を
トラバースするように北俣分岐方面へと歩く。

このキャンプ場跡地は開放的で素晴らしく素敵な場所なのだが
残念なことにもう使うことが出来ない場所だ。
三伏峠からも熊ノ平からも丁度いい位置にあるのになぁと残念でならない。




南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_21463398.jpg






南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_21550600.jpg







南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_21560008.jpg






南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_21494871.jpg






きついガレた斜面を登り切ると北俣分岐で
そこまで行ってしまえば塩見岳はもう目と鼻の先なのだが
目の前の空の暗さったら、
いつ雨が降り出してもおかしくない空模様なものだから
気持ちが沈んでいく。
それとは逆に雨が降らないうちに塩見を越えたい・・・と躍起になるのだが
そう簡単には速く歩けない。
それでもなんとか北俣分岐に到着。

そこでお会いしたご夫婦と昨日の雷雨の話で盛り上がると
気持ちは晴れ晴れとしてきた。
お二人はこれから蝙蝠岳方面へ行くそうなのだが
雨が降りそうだからビバーグしようかと悩んでいた。
雨が降らないうちに行きますね
と別れたのだが、その直後に雨は降り出した。


南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_22015645.jpg




昨日の雷雨のこともあって、そう簡単には止むことはないだろうと
早々にレインウエアを着込みカメラはザックの中へ。
さっきせっかく晴れ晴れした気持ちになったのにまた憂鬱な気持ちになる。
この後がなかなか怖くて、、、
北俣分岐から塩見岳東峰への稜線で
距離としたらほんの数メートルなのだが右側が切れている。
岩場ではなく、土?の地面でそこを数メートルトラバースするのだけど
兎にも角にも怖い
なんでこんな場所にロープも鎖もないの?
ゆっくり歩いたらそのまま右側へ落ちていくんじゃないか?と不安になるくらい。
みんなよく平然と歩いてるなぁ
わたしがビビりなだけなんだろうか。
雨でぬかるんで滑ったら。。。。
という不安を打ち消して足早にエイやっという感じ。

あぁ・・・怖かった・・・。
そこを抜ける頃、雨が止む。
塩見岳がやっと顔をだしてくれた!と喜ぶとまたすぐ雲に隠れていく。





トラバースを抜けると塩見岳はもう目前。
足元に咲く花々に癒されて青空も薄っすらと見え隠れすると
気持ちも上向きになってくる。



南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_22141362.jpg





南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_22142320.jpg





南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_22151463.jpg





南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_22162594.jpg





南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_22165639.jpg







南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_22370769.jpg







南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_22235056.jpg



塩見岳東峰、西峰登頂


ふぅぅ、やっとついた。ホッとする一瞬。
塩見でご一緒になったグループの方々がとっても楽しい方々で
ほんのちょっとしかお喋りはできなかったけれど
お喋りできたおかげで元気を貰えた。


その頃にはすっかり雨も上がり、うっすらと水色の空も見え始めてくる。




南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_22272553.jpg




南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_22274865.jpg



もう核心の場所は抜けただろうとすっかり安心していたが
塩見岳はそう簡単にはいかなかった。

西峰からの下りもひゃぁぁぁ。。。。という風。
ザックが岩に引っかかって押されやしないだろうか?
もし押されたら飛び出して滑落するよね、
一旦恐怖の妄想にかられると一歩を出すのが怖くなってくる。
乾いてたらそんなに怖くないのだろうけど、雨上がりで濡れてるから怖くて仕方ない。
垂直(のように感じる)に降りる箇所が幾つかあって、
足をどこにつけばいいのか見えない、その次の足をどこに置けばいいのか
そしてその一歩が滑りそうで怖い。
昨日の雷雨の中歩いた岩場の恐怖をまだ引きずってる気がした。
兎にも角にも、いままで登った山の中でこの時が一番怖かった。








南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_22390818.jpg




天狗岩も越えて、もう終わりだよね?
もう怖いとこないよね?
ふぅぅぅぅよかった。


そこから塩見小屋まではあっという間、
あとは三伏峠小屋までだ、と思ったら又雨が降り出した。
ほんとうは休憩取りたかったが、雨の中休憩取ったら先に進むのが嫌になりそうで
このまま行こうと歩き出す。
歩き出すと雨は本降り。
容赦なくザーザー降ってきた。
そしてまた、
雷が鳴り出した。

もうヤダ。。。と思いつつも下って行くけれど
雷鳴は大きくなるばかり
もう無理、この先こんな中4時間近く歩けやしないよ。
夫にまたしても宣言する。

塩見小屋に泊まる。

が、今度はなかなかうんと言ってくれない。
なんてったって1日目も小屋泊したのだから。
しかも、明日、鳥倉で一番のバスに乗るには塩見小屋からだと遠すぎると言う。
でもわたしは雷のおかげで歩く気力がもう無いのだ。
あれこれ言い訳をしてやっと夫を説得。塩見小屋に戻る。


塩見小屋に戻って宿泊の手続きをする。
素泊まり5,500円/一人
荷物を降ろして身の回りの片付けを終えて外へ行くと
すっかり雨は上がっていた。

すぐ上がると思ったよ。

とふてくさてる風に夫が愚痴を言ったが、聞こえないフリをした。
小屋の少し上から塩見岳を眺めると
塩見岳がなんだか優しく見えた。






南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_23405613.jpg







南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_22585152.jpg





南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_23001599.jpg






小屋の夕食が始まる前まで、小屋の中のテーブルを借りて簡単にパンで腹ごしらえをする。
もうカップラーメンですら作る気力もない。
食べながら明日の打ち合わせ。
鳥倉登山口まではかなり距離を残してるから
午後のバスにしようと言ったら
高遠からのバスの終バスに間に合う?ということになり
調べていくと土日の高遠から仙流荘方面行きの最終バスが平日より早いようで
鳥倉で午後便に乗ると間に合わないということが判明した。
そうなると必然的に9時10分のバスに乗らなければならない。

と、いうことは?
塩見小屋から鳥倉登山口までのCTは約5時間半
余裕を見て塩見小屋を2時過ぎには出ようとなった。
そうと決まればトイレ行って歯を磨いてそうそうに寝ようと寝床へ向かった。

塩見小屋の部屋は本館と別館とがあって、どちらも蚕部屋のような作りで寝床は2段式。
寝具は寝袋とマットだ。当然、眠れる自分の場所はマットの幅しかない。
混んでるのと予約してないこともあり、夫と寝る場所が離れた。
当然両隣は見知らぬ人。そして男性。寝袋に入っても横を向くことすら出来ない。
動けないと思うとなんだか緊張して疲労はMAXなのになかなか眠れない。


普段、どこでもぐっすり眠れるのに今度ばかりは眠れず
寝ては起き、寝ては起きを何度も繰り返してた。
起床予定の1時にはアラームより先に目覚めアラームを止めるという、
いつもの山行なら有りえないことをした。
着替えなくてもすぐ出れるよう、ウエアは着たままだったから
靴下だけ履いて手荷物を掴んでハシゴを降りる。
もちろん、ザックを担げばすぐ外に出られるようにしてある。


小屋の外へ出てから荷物の整理をし、
水分だけとって小屋を後にした。


ヘッデンの灯りを頼りにぐんぐん下って時折登り返したり。
しかし、、、ヘッデンの灯りに向って蛾とか虫が飛び込んでくるのに辟易する。
頭につけるのを止めて、ヘッデンを手に持って歩く。
手に持って歩くのは意外と疲れるものだった。

それとこの辺りは真っ暗でもしっかり整備されているし迷うこともない。
横川岳から野呂川越を暗闇の中歩いてたらこう簡単にはいかなかっただろう。

樹林帯の中で前から灯りが見えてきて、この日初めて人とすれ違う。
三伏峠小屋からかな?早い時間に出発したんだろう
闇の中で人と会えると暗がりの不安がかき消されるような気がする。


本谷山へ登り返しそれから下って下って
次は三伏山へと登り返す。
その頃になると
いよいよ朝が近づいてきた。




南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_23213908.jpg




三伏山から東を振り返ると
塩見岳のシルエットが浮かび上がってきた。

夜が明ける。




南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_23264107.jpg





南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_23265557.jpg





南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_23274074.jpg






南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_23281894.jpg



仙塩尾根で迎える最後の朝。

あれだけ『もう歩きたくない!』と思っていたのに
もう少しでゴールかと思うと寂しくてしかたない。
陽が昇る前のこんな時間だからちょっぴりセンチになるのだろうか。
そしてこの朝の、なんと美しいことよ。




am5:50 三伏峠小屋




南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_23382091.jpg






南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_23412721.jpg





ここから鳥倉登山口までは2時間15分ほど。
時間は余裕があるのでトイレ休憩と水分を補給する。

これまで仙丈小屋の水と熊ノ平小屋で汲んできた水を飲んでいた。
どちらの水も何も考えないで飲んでたのだけれど、
塩見小屋からここへくる途中で熊ノ平で汲んできた水がなくなり、
自宅の浄水で作った保冷剤代わりに凍らしてた水を飲んできたのだが
熊ノ平の水を飲み慣れた後に飲んだせいか、家だとなんとも思ってなかったのに
家から持ってきた水の不味さったら、それに驚いた。
味がまったく違うのだ。
それは三伏峠小屋で買ったペットボトルの水ですらそうで
仙丈小屋の水も熊ノ平小屋の水も然り
南アルプスの天然水の美味しいことったらこの上ない。(多分☺︎)







南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_23491577.jpg







南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_23505572.jpg






南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_23513981.jpg





南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_23562955.jpg







南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_23570819.jpg







この山とのサヨナラの時間が近づいてくる
三伏峠小屋を出て鳥倉を目指す。
木々の間から見え隠れする塩見岳に後ろ髪を引かれ
塩見岳が見えなくなると次第に周りの植生が変わり
ダケカンバの代わりに落葉松の森になった。
落葉松にかこまれてきたなぁ・・・と思ったら
落葉松の足元にはシダが生え始め、
次第にシダが勢力を増してきたなぁと思ったら鳥倉登山口に着いた。



仙塩尾根はもう歩くことはないな
塩見ももういいや。
とずっと思っていたのに
下山してしまうと
もう一度スタート地点に戻りたいと思ってしまう。




南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_23590520.jpg






南アルプス 仙塩尾根を歩く ⅴ_e0307372_23585226.jpg





バスに揺られること約2時間、伊那大島駅に着く。
ここから電車とバスを乗り継いで仙流荘まで戻る。


高遠から仙流荘行きのバスに乗り、山が近くなると
また雨が降り出し、雷が激しく鳴り始めた。


今日も雷雨だ。




おしまい。






[ 追記 ]

山へのアクセス、車の回収について

行き 自宅→マイカーで仙流荘 無料駐車場に駐車 (任意で協力金200円)


下山後 鳥倉登山口から南アルプス登山バス鳥倉線で伊那大島駅(8/25で今年の運行は終了)
    伊那大島駅からJR飯田線で伊那市駅下車 伊那市駅でJRバス関東 高遠線に乗り換え高遠駅下車
    長谷循環バスに乗り換え仙流荘へ。
    ※高遠で長谷循環バスへの乗り換えでバスの遅れなどがあっても循環バスは待っててくれました。









by mt_kawamin | 2019-09-18 19:00 | 山登り